魔法学校の最強魔法使い( Ⅰ )

「あれは……我が妻なのだ」


ドラゴンの族長が静かに話し始めた。


「数か月前、あいつはひとりでここより南東の暗黒大陸へ行った。
我ら龍の一族は日々を脅かす魔物を減らそうと動いておった。
我が妻は最も強大な魔物が多い暗黒大陸の見回りに出向いたのだ。

だが、それより妻は帰ってこなかった。
我は世界中探し回った。

そして今日(こんにち)、漸く見つかった妻はこうして街を破壊しておったのだ。
白銀(しろがね)の体は漆黒に、蒼玉の目は血の紅に変わっておった。

ただただ破壊する様は……あれは、最早魔物だった」



自我を無くし、日々を破壊する魔物に成り下がってしまった妻。

いつも側に寄り添っていた妻は。
族長にあがる時も、尻込みする自分の背中を押してくれた彼女は。

このままであることを望まない。




ドラゴンの族長は顔をあげ、ティアと目を合わせた。

ティアも彼の目をじっと見返す。


「あれは我がかたをつける。
あれを追い、被害の出さぬよう止める。
だが、何かあったときは……そちらでも、力を貸してくれぬだろうか」



本当はそんなことしたくない、と。

彼の目は妻を傷付けたくない、と願う気持ちを奥に秘めている。


だが、それでも彼は討つと言う。
他人の手を借りてまで。

それはひとえに妻を救いたいが故。



「…私はウィッチの意思を代弁できる立場にない。
王族と、討伐の協力を実行するであろう退治屋の当主に進言することしか出来ないわ」

「それで構わん。是非とも頼む。
我は一度国に帰り、正式に各国に協力を依頼し用意を整えたあとまた妻を追う。
……ではな、勇敢なウィッチの娘」



そう言って、彼は青い空に飛んでいった。