「待てっ!!!!」
何処からともなく聞こえてきた制止の声に、龍の爪が一瞬ピタリと止まる。
その隙に何かが龍を突き飛ばした。
「…金の、龍……?」
倒れていたティアが見たのは、戦っていた黒い龍よりも一回り大きく、体が黄金に光る龍だった。
龍の首には白く光る珠が下がっている。
突然表れた金の龍が黒い龍を突き飛ばして、ティアの前に立ち塞がっていた。
何が起きているのか……。
ティアは突然のことで何も考えられない頭を精一杯動かそうとするも、うまく働いてくれない。
ぼんやりと座り込むティアの目の前で金の龍は黒い龍に襲いかかり、黒い龍は一気に怪我を負う。
黒い龍はすぐに身を翻し逃げていった。
ティアを助けてくれた金の龍は振り返りティアをその大きな瞳に映す。
「…大事ないか、ウィッチの娘よ」
金の龍の声は低く深みがあり、その上で優しい。
ティアに安心できる心地よさを与えた。
「…ええ、なんとか。
……あなたは?」
「我も大事ない。心配は無用だ。
…我はドラゴンを治める長だ。この度かようなことを我が一族が引き起こし、申し訳ない。」
金の龍は、自らを族長だと名乗った。



