「どうしたの?部屋に戻らないの?」

「あ、うん……ちょっとね………」


アンジュはそう呟いて下を向きもじもじしている。
ティアが顔を覗き込むと、アンジュは決心したように顔をあげた。


「あのね…わたし、総合クラスにいきたいの。
わたしまだ何をやりたいかとか決まってなくて…総合クラスならそこまで進路限定しないかなって。
でも、わたし全然強くないから、今のままだと総合クラスでやってけないかなって……。
だ、だから、ティアに魔法教えてほしいの。
……料理教えてもらってさらに魔法もって悪いんだけど……」


アンジュに頼まれて、ティアは彼女が言いたいことを理解した。

確かに今日の様子をみる限り、アンジュはあまり実戦向きではなかった。
落ち着いてやればちゃんと魔法を発動できるのだが、どうやら試験は実戦形式。
相手の動きを読み、攻撃を避けながらこちらも攻撃を仕掛けるといのはアンジュには厳しいだろう。

実戦がダメなら頭脳派クラスにいけばいいのだが、頭脳派クラスにいけば少しでも実戦の伴う職業につくものはほとんどいない。
将来がある程度限定されてしまうため、まだ進路が決まっていないアンジュがそうしたくないといことはティアにも簡単に想像できた。

可愛い可愛いアンジュの頼みだ。

ティアには引き受けるという選択肢以外存在しなかった。


「いいわよ、やってあげるわ。
二人とも空いた時間でいいかしら」

「うん!もちろん!
ありがとうティア‼」



満面の笑顔で抱きついてきたアンジュの頭を撫でるティアの顔は、デレデレとゆるみきっていた。