「そういえばティアの魔具って見たことないな、どんなのなの?」

「見たい?」

「見たい!」


そう言って目を輝かせたアンジュに、ティアが見せない訳がない。

ティアはアンジュの前に右腕を突きだした。
ティアの右手首には、剣の形のレリーフがついた金色の腕輪がはまっている。
剣レリーフの真ん中に赤い宝石がついていた。


「ティアの魔具って腕輪なんだ。
じゃあ、この赤いのが魔石?」

「そう。
でもこれすごいんだよ、ちょっと見てて」

そうしてティアはアンジュから右腕を離すと、腕輪の剣レリーフの裏側についている蒼い宝石に魔力を流した。
すると腕輪が光の束になり、ほどけるように消えていく。

腕輪がすっかり消えると、ティアの右手には綺麗な剣が握られていた。
刀身は白銀に、柄は白金に輝き、沢山の美しい彫刻が掘られている。
柄にはさっきの赤い魔石と蒼い宝石があった。


「えへへ、すごいでしょー」


ティアは自慢気に笑うが、その場にいたほとんどは目を見開き、言葉を失った。




腕輪は魔法具だ。

魔法具は魔具とは違う。
魔具は魔力を流し呪文を唱えて魔法を発動させるが、魔法具にはすでに使う魔法が刻みつけられていて、ついている魔法石に魔力を流すだけで決められた魔法を発動できる。

ティアの腕輪は、魔具である剣を腕輪に変化させる魔法を刻みつけた魔法具なのだ。
剣を持ち歩くのがめんどうだったティアは腕輪にして携帯しやすくしていた。

しかし、剣を持っているのは軍人等の、普段剣を使うような人達だ。
ティアは退治屋の仕事をするため持っているが、普通の人は持っているはずがないのだ。


ティアは自分の魔具を自慢できて嬉しそうにしていたが、アンジュを含め周囲はティアを『ただ者ではない』と認識を改めていた。