モーニ「おはようございます♪ナランハさん、アインさん♪ご依頼はあちらのクエストボードに張り出されております。朝食はあちらの席でお済ませください。」


下へ降りると、モーニが満面の笑みで挨拶をし、左手で机の方を指す。


アイン「おはようございます!」


ナランハ「おはようござまー。」


それぞれ返事をすると、席に着く。夜とはうって変わり、静かな酒場で朝食をたのむ。


ナランハ「アイン、何食う?」


アイン「ナ、ナランハ!俺お金持ってないよ!?」


ナランハ「ああ?んなもん俺が出してやるにきまってんだろー?気にせず食えよー。」


アイン「ありがと、ナランハ。」


早速メニューを手に取り見てみるが、よくわからない文字でかかれており、どれを頼むべば安全かなと思案していると、注文を決めたらしいナランハがこちらをじっと見ていた。


ナランハ「なぁ、アイン。お前さぁ…」


アイン「な、なに?」


ナランハの顔がスーッと耳元まで近づく。心臓がドキドキと高鳴る。


ナランハ「お前、文字読めないだろ?転移で来てるんだから。」


アイン「う、うん。そうなんだよね。どれ選べばいいかわかんなくて。」


ナランハ「そうか。俺がどんなのか教えてやるから合わせろ。文字はそのうち覚えてけばいいからさ。」


アイン「わかった。」


小声での会話を済ませると、元の位置に戻る。


ナランハ「だよなぁ!俺のオススメは〜このフレッシュミートかな!」


メニューの一端を指さしながらナランハが言った。


アイン「そうなんだ!なら俺それにするよ〜。」


ナランハ「おっけおっけ!」


そう言うと、ナランハは机に置いてあったベルを手に取り、チリリンと鳴らす。すぐにパタパタと音を立てながら、エプロン姿で頭に頭巾をかぶったウェイトレスのような人が走ってきた。


ウェイトレス「ご注文はお決まりでしょうかぁ♪」


ナランハ「ああ、このミネラルロースとフレッシュミートをくれ。」


ウェイトレス「かしこまりました♪ミネラルとフレッシュですね〜。ご注文は以上でよろしいですか?」


そう言ってウェイトレスが顔を上げた。その顔を見た瞬間固まってしまった。


アイン「ギ、ギルド長…何してるんですか…?」


ウェイトレス「あらあらぁ!バレちゃったー!」


ナランハ「気づくのおせーよ、アイン。ここのギルドの酒場では、ギルド長が暇つぶしに働いてる時があるんだよ。」


アイン「そ、そうなんだ。びっくりした…。」


ギルド長/ラズ「うふふ♪あ!あとアイン君!私の名前はラズですからね!ちゃんと名前で呼んでくださいね!ナランハさんもっ!」


アイン「あ、はい。了解です!」


ナランハ「あ゙ーい。」


ギルド長/ラズ「ではでは♪お持ちしますので少々お待ちくださいね♪」


そう言うとラズは立ち上がり、厨房のほうへと駆けていった。ラズが去るとナランハが机に伏した。


ナランハ「な?やばかったろ!変に違和感持たれるとこだったなぁ〜。」


そう言ってナランハはケラケラと笑う。


アイン「ほんとだよ…。って俺のことみんなは知らないの?異世界から来たってことをさ。」


ナランハ「んー、まぁそうみたいだなぁ。金光は誰か1人に言えばたちまち広まるとでも思ったんじゃねぇか?」


アイン「そーなんだ。ちなみに、バレるとどうなるの?」


ナランハ「ああ?異世界人は何かと嫌われるんだ、災厄を招くのがほとんどだからな。だから多分、良くて死ぬまで牢屋生活か悪けりゃ即死刑だな。」


絶対バレるわけにはいかねぇな、と心の底から思った。


アイン「そ、そうなんだ。今のはかなりやばい状況だったんだね。ちなみにさ、クエストってどんなのがあるのかな?」


ナランハ「クエストなぁー。俺も今日が初めてだからよく分かんねぇんだよなぁ。」


ラズ「お待たせいたしました〜♪」


注文した料理を盆に乗せ、ラズが運んできた。それぞれの手前に料理をおくと、ラズは隣の机から椅子を引いてきてナランハの隣に座った。


ラズ「少しとなり失礼しますね♪初心者のおふたりにはクエストの種類と受託条件についてお話しますので♪」


ラズはそう言うと、どこからか大きな丸まった紙をとりだした。