突き当りの階段までたどり着き、下まで降りていく。階段は松明で照らされていたものの、やや薄暗かった。半分ほどまで降りたところで、下から登ってくる足音が聞こえてきた。


アイン「だ、誰だろ。」


ドキドキしながら下へ降りていく。少し行くと、下から登ってきた人と顔が合った。


アイン「あ」


ナランハ「お?アインじゃねぇか。起きたのか?」


登ってきていたのはナランハだった。自分の行動を思い出し、思わず顔が赤くなり顔を逸らす。


アイン「う、うん。今からギルド長に会いに行くとこ。」


ナランハ「おお、そっか。ま、気楽にな。あと礼くらいは言っとけよ?」


アイン「うん。じゃ、また後でね。(なんか普通だったな?覚えてないのかな?)」


ササッと横を通り抜け、階下へ急ごうとする。と、肩に手を置かれた。


ナランハ「ちょーっと待て。なんか言うことない?」


アイン「……(あ、これ覚えてるやつだ…。ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!)」


ダラダラと汗が流れる。振り返れずに、固まっているとナランハが肩に置いた手に力を込め始める。


ナランハ「アインくーぅん?なんか言うことないかなぁ?」


ギリギリと肩を掴まれて、体が動かせない。


アイン「えっと、その…。ごめん、なさい?」


ナランハ「このやろっ!やーっぱし意識あったんだな!人の唇奪いやがって!」


バシッバシッと肩を叩かれ、ほっぺをつねられる。


アイン「いひゃい、いひゃいよナランハ。」


ナランハ「お、ま、え、が!変なことするからだろ!」


手を離され、尻餅をつく。ふと、目線がナランハの方へ行った。ナランハの顔がやや赤くなっていた。


アイン「だ、だって詠唱止めるにはあれしかないって思って!」


ナランハ「それがなんでキスなんだよっ!他にあるだろ!」


アイン「て、手っ取り早いかな?と!」


パーン!と音を立て、ビンタをされる。ほっぺが赤くなり、ヒリヒリ痛む。


ナランハ「バカヤロウ!乙女心を知れ!」


ナランハはそう言うと、走って上へ行ってしまった。


アイン「いてて…。やっぱ怒ってたか。ほっぺ熱いよぉ…。」


呟きながら、ほっぺをむにむにとなでる。


アイン「あ、早くギルド長のとこに行かないと!」


ギルド長のことを思い出し、足早に階段を降りて、1階へたどり着く。1階は広く、酒場みたいになっていた。ざわざわととても騒がしかった。


アイン「うわぁ…。ギルド長どこにいるんだろ?」


「……の魔物はなかなか強かったなぁ。」


「レベル上げるなら…」


「報奨金高いクエストはやっぱ王都近くだろうなぁ…」


などと、様々な雑談が飛び交う。キョロキョロと見回してみるが、そもそもギルド長の名前も顔も知らないことを思い出し、がっくりとうなだれる。


アイン「うぅーん…。どこにいるんだろ、ギルド長は。」