ノース「っていうことがあったんだよ!ほんと酷いと思わねーか!?なぁ!リス!」


リス「はぁ…。だから行くなって言ったでしょう?彼はレベル21なんだから。あなたはレベル1、しかもスキルすら覚えてないんでしょう?」


ノースはギルドのクエストカウンターの前に来て、叫んでいた。目の前には呆れ顔をした金髪の受付嬢、リスがおり、やれやれと首を振って続ける。


リス「あなたはまずスライムでも倒してレベルを上げてきなさい。中級以上のクエストを受けたいなら、クランに入ってて、最低限四つはスキルがないとダメよ。」


ノース「つってもさ~拾ってくれるクランなんてないし、それに俺勇者じゃん?ならやっぱ二リスくらい簡単に倒せねーとダメだろ?スキルなんて使わずにさ!」


リス「はぁ…あなたは勇者じゃないでしょう?スキルは生きるために必須の力なの。このギルドの掟を破らない限り怪我はすれど、死なないからって無茶しすぎよ。今度掟を厳しくしてもらおうかしら。」


リスが少し怒り気味に言った。
ノースはションボリとし、諦めたようにボソリと


ノース「スライム狩り行ってきます…。」


と呟いて、目の前の紙に討伐、と書いて出口へと向かった。


リス「あ!ノース!ほらこれ!クエスト手帳と印象紙!忘れたらダメでしょう!」


その後ろ姿へ向けて、リスがカウンターにおいてあった小さな袋を投げる。ノースは振り返ってそれをキャッチし、


ノース「ありがと!頑張ってくる!」


と応えた。


リス「行ってらっしゃい!スライムだからって気を抜くと、送還食らうわよ!」


ノース「分かってる!死なない程度に頑張るよ。」


ノースは出口の扉を開け外へ出て行った。


リス「しかし、何でかしらねぇ?あの子のレベルが全く上がらないのは。モンスターもだいぶ倒してるし、もう5くらいにはなっててもいい頃なのに…。やっぱり…アレのせいかな…?」


リスはカウンターに頬杖を付き、悩ましそうにつぶやいた。


ノース「あー!くっそ!レベルが上がんねぇ!二リス討伐にもついてったのに!何でだ!?」


ノースはギルドの出口から出ると走りながら叫んだ。町で宿屋を営んでいるおじさんがその姿を見て声をかける。


「お!ノース!今日もスライムか?あんまむちゃすんなよー!」


ノース「分かってる!宿屋のおっちゃん!」


「無茶したくてもできないって。あのノースだぞ?冒険者ならみんな使えるはずのスキル、ストライクさえ使えないんだからなー!」


「それもそうか。わははは!」


おっちゃんとそのそばにいた冒険者らしき人たちの間で笑いが起こった。ノースは顔を赤くし、森へと向かって一目散に駆け抜けた。


町の人が何事かをつぶやいて、さらにどっと笑い声が上がった。


ノース「今に見てろ…。俺は勇者だ!絶対に見返してやる!」


ノースは小声でそう呟き、スライムの湧くライム森林へと向かった。