アイン「はぁ…はぁ…。まだ着かないのかな。」


大きな石に腰掛け、夕暮れの中アインはつぶやいた。運のいい事に、道中魔物に出会うことは無かった。しかし、目覚めてからのリスベールの様子は終始おかしかった。
アインの質問にリスベールは看板を見ながら、答える。


リスベール「まだよ、もう少し歩かなきゃいけないわ。遠回りしたせいで暗くなってきてるし…。夜は魔物が活発になるから、かなり危険よ、気をつけてね。」


リスベールは自分に関係がないような口調でアインに忠告をする。


アイン「そうなんだ。ところでさ、リスベールさん。」


リスベール「うん?何かしら?」


リスベールの顔を見て、アインは唇をかみ言葉を飲み込んだ。


アイン「ううん、何でもない。」


リスベール「デューイのこと…よね。私が行かせなければ…。もしかしたら、の気持ちは割り切ったつもり…よ。でも、悲しい。悲しくてたまらない。」


リスベールは言い、少し涙を見せた。アインは何も言えず、黙り込んで、下を見る。リスベールは涙を拭き、続ける。


リスベール「でも、だからこそ、決めたわ。このままじゃいけないってね。私は魔王を…魔王を、倒してみせる。」


アイン「リスベールさん…。」


リスベール「あなたは、ついて来なくていいわ。私の個人的な理由に誰かを巻き込むのは嫌だから。」


アイン「でも…!一人じゃ無理だよ!将軍だけでもあんなに強いのに。」


リスベール「それでも、私はやってみせる。それに、あなたは一般人じゃない。だから…。」


リスベールは厳しい目をしてアインを見た。


リスベール「だから、ごめんね。アイン君、ありがとう。」


アイン「えっ…?」


ドカッという音がして、アインの視界がゆがむ。リスベールはさらに追撃を加えた。アインは暗くなる視界の中で、リスベールが腰から時雨を抜いていく姿をみた。



アイン「ぅ…うぅん…。」


目覚めると、アインは何故か木の上にいた。あたりはすっかり闇に包まれ、ほとんど何も見えなかった。周りを確かめようと手を触れると落ちないように、板が敷かれていることが分かった。


アイン「リスベールさん、何であんなことを…。考えても、仕方ないことだけど。」


深い闇の中で、小さな明かりが動いた。アインは目をこすりながら、それを見つめると、なんと、炎だけが、ゆらゆらと動いていた。


アイン「ほんとにここはどこなんだ…。」


つぶやきが漏れた。


アイン「…暗くちゃ、移動もできないな。とりあえず、寝よう。明日には町につくはずだし、なんとかなるはずだ。」


アインは自分に言い聞かせるようにそう言うと、寝転がり、目をつぶった。