あれから少しずつ、潤ちゃんのいない日常に慣れつつあった。




潤ちゃんとは時々、LIMEでやり取りしていた。




親とはまだ、いい関係とは言えないが、少しずつ前に進めているらしかった。




私の方といえば、好きな時間に起き、適当な食事をし、倉庫に行ったり、一日中なにもしないという、自堕落な生活を送っていた。




そんなある日、優奈から招集がかかって、私は倉庫までバイクを走らせた。




幹部室に着くと、既にみんなが集まっていた。




「はーちゃん、こんばんは~」




燈が笑顔で手を振る。




私も挨拶をしてから、自分の席に座った。




それを確認して、優奈が話し出す。




「みなさん、今日は急なお呼びたてにも関わらず、集まってくださりありがとうございます」




「私たちに予定なんかあるわけないんだから、気にしなくていいよ」




ちょっと春美、その言い方はどうかと思う、と私は言い返しそうになったけれど、春美の言ったことが正しすぎて口をつぐんだ。




なんという寂しい夏休みを送っているんだ。




と、自分に呆れる。




「みなさんに一つご提案があるのです」




優奈はそう言って、改めて姿勢を正す。




「私たちは、失踪した二人を探してきましたが、もう出来ることは全てやってしまいました。そして、調査は何も功をなさず、彼らの行方は掴めませんでしたね」




あの日、私たちと同じように生き残った2人は、私たちの前から姿を消した。




あらゆる手段で、出来得る限りの手を尽くして、彼らを探したけれど、足取りは何も得られなかった。




彼らに会って、謝りたい。




それが私たちの懺悔。




「そして、私は考えました。考えた結果、皇夜の方たちに話しを聞こうと思うのです」




それを聞いて、みんなが驚く。




優奈は決して、冗談を言っているようには見えない。




「ちょ、ちょっと待ってよ!あいつらに聞くって…私たちのこと余計疑われるじゃん!」




最初に口を開いたのは春美だった。




「春ちゃんの言う通り、燈たちとあの人たちが、何か関係を持ってたって、思われちゃうんじゃないかなぁ…」




燈が不安そうに春美に同意する。




「仲葉さんはどう思われますか」




冷静な顔で優奈が仲葉を見る。




「私は、賛成も反対もできない。多分、二人を探す最後の手がかりは彼ら。でも、彼らに話を聞くのは賭けをするようなものね」




仲葉は淡々と告げる。




最後のチャンスを得る代わりに、賭けをする。




まさに崖っぷち。




この賭けに負けたら、私たちの正体を暴かれる危険性が上がる。




もしバレたら、恨みや怒りで何をされるか分かったものじゃない。




2人に会うまで、私たちは生きなきゃいけない。




チャンスか、リスクか。




どっちを選ぶべきなの?