ブラックバカラをあなたへ

全然眠れなかったわ…




今日は廻さんとのお食事があるというのに…




何故かあの光景が忘れられなくて、眠りについたらこのモヤモヤも晴れると思ったけれど、目を瞑ると余計に色々考えてしまって、全然寝付けなかった。




一体、私はどうしたのかしら…




いくら考えても答えは出ず、とりあえず外出する準備を始めた。




予約をした店に行くと、すでに廻さんは来ていた。




『すみません、お待たせしてしまいましたか?』




『約束の時間には間に合っている』




これは彼なりの気遣いだ。




彼は冷たい人に見えるけれど、実際はとても優しくて、穏やかな人。




きっと、言いたいことを心の内に隠してしまうのだろう。




そんな彼が少し可愛く思えて、私は思わず笑ってしまう。




『何か変なことでも言ったか?』




『いえ、廻さんはお優しい方だなと思っただけです』




そう言うと、彼は少しそっぽを向いた。




あら?これは少し照れてるのかしら?




『俺は、別に、優しくない…』




そう、ぼそっと呟くと、彼はウェイトレスを呼んで料理を頼んだ。




『優奈はどうする?』




『私も彼と同じもので』




そうウェイトレスに頼む。




私は改めて彼の顔を見ていた。




何も手を加えていない、サラサラな黒い髪をオールバックにしていて、彼の端整な顔立ちがより際立っている。




本当に綺麗な顔だわ。




きっとたくさんの女性に慕われているわね。




私のクラスメイトもいつも彼を見て騒いでいるもの。




いつか、彼にもお慕いする方が現れるのかしら…




そしたら、私とはもう一緒にいてくれなくなるのかしら…




そう思うと、また胸が痛んだ。




心臓を掴まれたような、胸の苦しさが私を襲う。




どうして、私は寂しいと思ってしまうの…?




『優奈?』




私の名前を呼ぶ彼の声で我に返る。




『すみません、考え事をしてしまいましたわ』




私の名前だけをずっと呼んで欲しい。




そんな自分勝手な願いを一瞬考えてしまった。