いつからこの子はこんなに逞しくなったのだろうか。




潤ちゃんが泣いたあの夜は、とてもか弱く見えたのに。




小さく震えているだけの彼女はもういない。




すごいと思った。




いつまで経っても前を向けない私を押してくれるような、そんな力強さが彼女にはあった。




「みなさんにはとても感謝しています。宛もなく家を飛び出した私を、受け入れてくださって。みなさんがいなかったら、私は一生、あの家に囚われ続けていたと思います。




この二ヶ月、とてもとても楽しくて、こんな日々が続けばいいなと思っていました。でも、ずっと逃げていることにも気づきました。だから…」




そこまで言うと、一度口を噤んだ。




きっと、不安なのだろう。




初めてあった頃の彼女の腕には痣があった。




父に手をあげられると、潤ちゃんは言っていた。




そんな人に反抗するのだ。




きっと、恐怖なんて言葉じゃ言い表せない。




「逃げたっていいんじゃないかな?逃げることって、そこまで悪いことじゃないと思うよ?現に今、潤ちゃんは、逃げ出したことによって、決意できたんでしょ?結果良ければ全てよしだよ〜」




春実が明るい声でそう言う。




いつもゲームのことばかり考えているくせに、こういう時だけはいい事を言う。




「そうだよ!家出したのだって、自分の意思でしょ?うーちゃん、全然弱くないと思う!」




燈の言葉で、潤ちゃんの顔が明るくなる。




さすが燈。




「もし、父が遊んでいいって許してくれたら、またここに来てもいいですか?」




嘆願するような目で私たちを見回す潤ちゃん。




「もちろんよ。あなたはもう私たちの仲間なんだから」




仲葉が、仲間なんて言葉を言った…!




私はそれが嬉しくて、何回も首を縦に振る。




「潤さん、きっとお父様に抗うことはすごくお辛いことでしょう。それでも、その道を選んだあなたを、私は尊敬致します。どうか、その手で自由を掴んで下さいね」




優奈が優しく微笑みかける。




きっと、優奈がこの中の誰よりも潤ちゃんの気持ちを分かっているだろう。




そして、誰よりも潤ちゃんの信念を貫き通してほしいと思っているのだ。




「私も、応援してる!潤ちゃんだったら絶対大丈夫!」




私がそう言うと、潤ちゃんは元気に「はい!」と言った。