ブラックバカラをあなたへ

それから少しして、昼休みになった。



皇夜の連中は、どうやら今日は屋上で食べるらしく、碧斗が出ていくとそれに続いてみんなも出ていった。




彼らが出ていったのを確認してから、私たちは教室の真ん中へと座り直す。




談笑しながら昼ご飯を食べていると、あまり自分から話さない仲葉がめずらしく口を開く。




「さっき、彼と勝負の話をしていたようだけれど」




どうやら、碧斗との会話を聞いていたようだ。




「あなた、私たちが普通の女子高生ではないと言ってるようなものだったことに気づいているのかしら?」




急に仲葉の目線が鋭いものとなる。




仲葉がそんな顔をするのもめずらしく、私は頑張って先程の碧斗との会話を逡巡する。




ーーーで、俺が勝ったら?




ーーーじゃ、お前らの正体を明かすってことで。




ーーーそれでいいわ。私達の正体を明かせばいいの…ね?あ、あれ?正体って…




そうだ、私は自分が勝って正体を明かさなければいいことしか考えていなかった。




けれど、私の反応は、私たちに何かしらの秘密があるという証拠になってしまった。




これは、まずい、非常にまずい。




だからあの時、あいつはあんなに満足気な顔をしていたんだ。




あの顔は自信からくるものではなく、確証を得たから。




私はまんまとあいつの罠に嵌められたということだ。




「私としたことが…やってしまった……」




私が机に突っ伏すと、




「ようやく気づいたようね」




という仲葉の冷たい言葉が降りかかった。




「えっと、二人ともどうしたの?」




そんな私たちに、燈が心配そうに声をかけてくる。




あの時みんなで楽しくおしゃべりしていた3人と、ゲームに夢中になっていた春実は聞こえていなかったのだろう。




仲葉が事の説明をする。




「まあ、それは大変なことになってしまいましたわ。葉音さんがテストで負けるとは思いませんが、問題はまた別ですわね」




「ほんと、みんなごめん…」




「でも、はーちゃんがその勝負に勝ったら私たちのこと知られることはないんだよね?なら大丈夫だよ!」




私を励まそうとしてくれてるのだろう、燈にまた癒される。




だが、事はそんなに簡単でない。




だから、優奈も問題はまた別と言ったのだ。




燈以外はそれに気づいてるようで、困惑の表情を浮かべている。




「燈はほんとバカね。いい?私たちが何かを隠してるって気づいたあいつらは、今回だけじゃなくて、ずっと探りをいれてくるってこと。何としてでも私たちの正体を暴こうとしてくるわけ」




春実がはあとため息をつく。




燈もそこで理解したようで、結局困り顔に戻ってしまった。