ブラックバカラをあなたへ

ドサッ




「ひっ」




めのまえで倒れた男を見て、絡まれていた少女が小さな悲鳴をあげる。




ふぅ。あっさりだなー。




こいつら、くそ弱いし。




「お姉さん、大丈夫?」




「え、あ、はい…あの、ありがとう、ございました…」




少女は、俯きながらお礼を言う。




少女が着ているカーディガンの間から、痣が見える。




「お姉さん、夜は危険だからなるべく来ない方がいいよ」




俯いたまま、少女はコクンと頷く。




その途端、ポタポタと雫が冷たいコンクリートの道を湿らせる。




「…家、帰りたくないんですか?」




優奈が少女に近ずいて、背中をさする。




少しの間があって、彼女はまた小さく頷いた。




「なら、私たちのところに来ればいいよ」




私がそう言うと、彼女はバッと顔を上げる。




涙を含んだ目は、夜の月に反射してキラキラしていた。




「でも…」




「いいの、いいの!遠慮なんかいらないからさ!」




春実がニッと笑う。




その笑顔につられてか、安心したのか分からないけれど、彼女も優しく笑うと、ありがとうございますと小さく呟いた。




そんな彼女に手を差し出す。




彼女は少し、躊躇いながらも私の手を取る。




グイッと引っ張って彼女を立たせる。




「名前は?」




「あっ、桜坂潤|《さくらざかうるう》です!よ、よろしくお願いします!」




私達は、今まで深く被っていたフードをとって笑顔でそれに応えた。