決意を固めたからか、自然と涙は止まっていた。




でも、まだ、2人を止める術は考えつかない。




とりあえず今は、2人に何も言わないでおこう。




いや、少しだけ探りを入れるべきかもしれない。




「いつ、あいつらを殺すの?」




隣にいる翔平に目線を合わせる。




「決まってるだろう。10月15日だよ」




そう言って、翔平は不敵に笑う。




そんな翔平の顔を初めて見た。




変わってしまった…




寂しさと虚しさが心を締め付ける。




けれど、全て変わってしまったわけではない。




私に寄り添ってくれる優しさが、彼らには残っている。




きっと、大丈夫。




不安をかき消すように、自分に暗示する。




2人が人殺しなんてなりはしない。




彼らは私たちと同じ。




現実を受け止めきれなくて、こうなってしまっているだけだ。




私たちが全てを忘れてしまいたいと思っているのと同じ。




…2人の心は、意外にも弱かったのかもしれない。




だから鬼龍を消したいのかも。




ふと、そう思った。




心というのは、誰しも弱いものかもしれない。




そう思うと、少しだけ気が楽になった。




きっと、みんな、強くありたい。




だから私たちは、彼らとの日々を忘れないし、この世で生きている。




2人は強さの在り方を履き違えているだけ。




何が正しいのかなんて分からないけれど、今の2人は間違っているのだけは確かだ。




2人にそれを気づかせなければならない。




それが出来るのは私だけ。




暗殺者の家系に生まれ、暗殺の生業をしていた私だけ。




一緒に強くなろう。




少しでもこの人生が良かったと思えるように。




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私は知らなかった。




雅伊斗たちを殺した奴らはもう死んでいることを。




今の鬼龍には、あの日彼らに倒され気絶していた残党しかいないことを。




あの日の事は全て、誰かの手によって隠蔽されていた。