ぱちっ


ぼやけた視界がクリアになっていく。


「....ん？」


周りを見渡すと、
見慣れない空間が広がっていた。


ここ...どこ？



きちんと整理整頓された部屋。

モノトーンでまとまっている。

だけど、全く生活感が感じられない...

私はその部屋の大きな黒いベッドに寝ていた。




そういえば私､さっき電車で痴漢にあって....

考えるだけで、身体が震える。

あんなに怖いと思ったの初めて...



ガチャッ

『起きたのか？』


いきなり開けられたらドアからは長身の綺麗な顔をした男の人が出てきた。



だ、だれ？

？？？？

『まさかとは思うが...記憶がないのか？』

そう言って、男の人は私の寝ているベッドの横に腰掛けた。


え、えと...誰だろう..この人....


痴漢にあって....助けてもらっ.......あっ！


「痴漢から助けてくれたお巡りさんッ！」


『ん。』

私ってば、何で忘れてたんだろう...

「え、えっと...ここはどこなんですか？」


『ああ。俺の家だが...。』


えっ？！？！
何で私がお巡りさんの家で寝てるのっ？


『お前、痴漢にあって気を失ったんだ。だから俺の家に運んで休ませていた。』

そうなんだ...

『交番でもよかったんだが、仕事として色々、聞かないといけなくなる。』


「いろいろ？」

お巡りさんは少し言い辛そうに
顔を背けた。


『...今朝の詳細を…な。』


「........え？」


あの怖い出来事を詳しく話さなきゃいけないの？

そんなのやだ...


『だから、独断で家に連れてきてしまった。悪いな。』

私の気持ちを考えてくれたんだ...