屋上のキミ。

「ねえ、1つ聞いていい?」

僕がそうたずねると、凛はほんの一瞬じっと僕の瞳を見つめ
また笑顔を浮かべて答えた。

「うん、いーよ!」
「じゃあ、なんであんなところにいたの?」
「うーん。雲を触ってみようと思ったの♪」
「えっ…?」

「てゆーのは冗談!」

凛は相変わらず笑顔だった。
僕は凛の陽気さにはついていけない気がした。

「じゃあ、なんで?」

そこで初めて、凛は少し悲しげな表情を見せた。

「この世界ってらなんて小さいんだろうって思ったの。
広いように見えるけど、家とか〜学校とか、囲まれて縛られてばっかり!
せっかく広い空を見に来たのに屋上にまで柵があるなんて息苦しいなぁって。だから、少しだけ広い世界に近づいてみよう!って、それだけ〜!」

身振り手振りをつけて僕に話し、
そして最後にまた笑顔を見せた。
凛のキメスマイルっぷりに笑がこみ上げてきて僕達は2人で大笑いした。

「はぁーーーっ なんで笑ってるかわからないけど疲れたー。」
「あーくんが勝手に笑い出すからでしょ!」
「てか、もう1つ聞いていい?」

僕がそう言うと、また凛の目が一瞬真剣な眼差しに変わったのを僕は見逃さなかった。

「だーめっ!1つって言ったでしょっ。あ、あーくん授業遅れちゃうよ!」

その言葉の数秒後、
5分前を知らせる予鈴がなった。
凛はニコニコ僕に手を振っていた。

「凛は?授業は?」

僕がそう聞くと

「私こう見えて成績優秀だから♪」

と、力こぶを叩くような身振りをして自慢げに言い、また手を振った。

「ほんじゃーね!あーくん!」
「え、あ、うん、またね」

僕はそう言って急いで教室に向かった。