では、同居でお願いします

「あ、いきなり……すみません、俺、性急でした。あ、いや、まだお付き合いも許可いただけていないのに……うわ、失敗した」

明らかに狼狽している。

初めて見る諸岡さんの姿。

それに、初めて聞いた「俺」という一人称。
プライベートの彼は、「俺」が普通なのだろう。


どうしてだろう。


さっきまで深い底なし沼に沈み込んで体中が重たく濡れそぼっていた気持ちが、一瞬で軽くなる。

諸岡さんは、裕哉のことだけを考えて私にお付き合いを提案しているはずなのに、それだけではないような気持ちにさせてくれる。

(いい人だな……)

ニセモノの恋人だとしても、彼ならきっと優しくしてくれるだろう。

裕哉が信頼を置いているパートナーだ。私が信頼をしないはずがなかった。


まだ顔を染めたままの諸岡さんへと私は姿勢を正す。

一呼吸、整えてから尋ねた。

「諸岡さんのご提案に従いたいとは思うのですが、でも……いくらフリとはいえ、彼女が私なんかでいいのですか?」

諸岡さんにとってメリットがないように思えた。