では、同居でお願いします

「ご理解いただけましたか?」

「はい、よくわかりました」

物分かりいいフリをして返事をしたけれど、胸が痛い。


わかっていたのに。

以前、彼女の乗ったタクシーに向けていた裕哉の愛しそうな瞳を見た時から、彼女を大切に想っていることはわかっていたのに、こんな形で最後通牒を受け取るなんて、辛かった。


私の返事に、ニコッと諸岡さんが優しく微笑む。

「実際、あの藤川という男の存在も心配です。お付き合いくだされば、私は井波さんの彼氏として口出しをする権利ができますよね?」

「いえ、まあ、そうですが……。彼は私がなんとかするべきことで……」

「いけません。ああやって時間もわからないのにマンションの前で待ち伏せするのです。まともな仕事に就いているとは思えません」

あの頃、スーツを着こなし営業に回っていた藤川のイメージしかなかったから、失職しているなど考えも及ばなかった。

「執拗にあなたにつきまとうなど、彼はあなたを利用しようとしているのではないでしょうか。下手をすれば部屋に入り込まれてしまう恐れもある」

「まさか、そこまでは……」

「いっそ、私の部屋で一緒に住んではいかがですか?」

「え?」

とんでもない事を言い出した諸岡さんを、驚きの目で見つめると、彼は傍から見てもわかるほどに顔を真っ赤に染め、慌てて言い添えた。