――私たちは『いとこ』という関係。
それ以上でもそれ以下でもない。
それなのにそれ以上を求めてしまった愚かな私。
きっとこの愚かさは、高校生の時と一つも変わっていないのかもしれない。
声の沈み込んだ私に、諸岡さんはもう一度はっきりと告げた。
「それで、あなたの社長への想いが家族愛のようなものであるなら、私とお付き合いしていただきたいと思ったのです」
それで、の繋がりがわからず、私は何度か瞬きをくり返す。
理解していないことを察知した諸岡さんが説明を加える。
「井波さんを守る存在ができれば、社長は安心なさると思うのです」
「ああ」
ようやく納得する。
裕哉が心おきなく彼女の方を向けるように、諸岡さんは私と付き合うフリをしようと提案してきているのだ。
まだ付き合っていないという事実にホッとすると同時に、私が足かせになっていたことに愕然とする。
諸岡さんの口ぶりからすれば、裕哉は彼女を選びたいのに、私が心配で足を踏み出せないと、そう言いたいのだろう。

