では、同居でお願いします



そわそわしてしまう自分が恥ずかしい。


七時前に裕哉と諸岡さんが出てしまってから、私は妙に浮き足立っている。

書類整理をしながらも全く落ち着かず、何度も時計を確認してしまう。

諸岡さんと二人きりで車に乗るなんて、緊張してしまう。

今から話題を考えてみるが、やっぱり仕事のことしか話すことがない。お互い趣味の話をする機会もなかったし、と考えていた時、はたと思い至る。

(あ、諸岡さん、将棋をやってるとか……って、私、なんにも知らないし!)

モヤモヤとイメージしか出てこない。日曜日に何気なくテレビをつけると中継なのか将棋番組が映ることがあるけれど、二秒もしないでチャンネルを変えてしまうから、まともにルールも知らない。

(これじゃ話にならないどころか、話題にすることも危険だよね)


そうこうしている内に時間は七時半を越えてしまった。


「渋滞かな?」

呟いた途端、諸岡さんが慌てたように部屋に入って来て、デスクに座っている私を見つけホッとしたように表情を緩めた。

「すみません、少し遅れました」

少しだけ息が上がっている。時間に遅れたので急いで来てくれたのだろう。

いつだって冷静な諸岡さんにしては珍しく、いくらか頬の上気した姿は、いつもよりずっと若々しく見える。