では、同居でお願いします



――シンデレラでも夢見てたの?


ううん、夢見ていたわけじゃない。最初から届かないってわかっていた。自分が隣に立てるなんて思ってもいない。

いくら自分に言い訳してみても、やっぱり彼女たちの笑い声は、私を揶揄しているように聞こえてしまう。

(早く裕ちゃんへの気持ちを消してしまいたい……)

想うだけでいいなんて考えていた自分が浅はかだった。
こんな気持ちを抱いたまま、側にいることがいけないことだったと、ようやく私は気がついた。

けれど、どうすればこの気持ちが消えてくれるのか、その方法が全くわからなかった。


この感情が消えるなら、何でもする。

そう思う一方で

この感情が消えてしまうのが寂しい。

そんなことも考えてしまっている。


思い返してみれば、誰かを心から好きになったのは初めてかも知れない。

ずっと退屈を感じていた中学生、高校生時代は、誰かと深く付き合うことを求めたりしていなかった。


唯一、心惹かれたのは――藤川という最低の男だった。


騙して、もてあそび、平気で捨てて行った最低の男。

だから前の会社の社長が女遊びをくり返しているのを知った時は心底軽蔑した。
こんな人に情熱を感じたのかと思うと自分がバカらしくなってしまった。


「どうも私は男運がないと言うか、見る目もないんだろうな」


呟いて、ようやくその場を離れた。