泣きたくなる。
こうして抱きしめられていると、裕哉を頼ってしまいたくなる。
「怖いの」と告げてしまいたくなる。だから、私はそっと裕哉を押し返す。
「社長、本当に寝不足なだけです」
「でも寝不足になるってことは、その原因があるってことだよ? 何でも相談して欲しい。僕はいつでも海音ちゃんの力になりたいんだから」
(嬉しい……)
裕哉が今、紡ぐ言葉は「従兄弟のお兄ちゃん」として告げていると理解している。
それでも、気にかけてくれていることがとてつもなく嬉しかった。
「ありがとう、裕ちゃん。嬉しいよ」
そっと腕を持ち上げて裕哉の背中へと手を回すと、裕哉は一層力を込めてグッと私を抱き寄せた。
彼女に、ごめんなさいと謝りながら、私は腕に力を込める。
「海音ちゃん、本当に僕の部屋に戻ってきてよ」
切実な声に私は願う。
(それ以上、言わないで……。辛くなってしまうから)
それでもこの腕を解くことができなくて、自分自身に困惑している。
「あ、でも海音ちゃん、もし戻って来てくれる時は……僕の部屋を見ても怒らないでね」
その一言に、一瞬で脱力した。

