「今度は目を背けない」


紀ノ川さんからもらったミルクティーの蓋をカチリとひねって開ける

柔らかな甘い香りは、逆立った気持ちを癒すと同時に、強くなれと決心を促す。

今はもう一人でなんでもできる大人だ。
退屈から逃げたくて、前を見ることを怠った自分の落ち度。もうくり返さない。

背を向けることは、何も解決にならない。
それに、恋は実らなくても裕哉を想う気持ちがある限り、あんな男の良いようにはならない。絶対に。

「心の中に住んでいるのは裕ちゃんだけなんだから」


神様は遠くにいるから尊いのだ。

手が届かないから切望するのだ。


それでいい。

裕哉との関係は、ただそれでいいから、私は一人で強くならなくてはならない。


ペットボトルに唇を寄せると、一口ミルクティーを飲む。

甘く温かい味わいに、先程の紀ノ川の姿を思い出してフッと笑みが浮かぶ。

「お礼……しなくちゃ、紀ノ川さんに」

もう一口飲んだミルクティーは、やっぱり過剰なほど甘くて、そして優しい味がした。