途端に私は膝から崩れ落ち、その場にへたり込んでしまった。
怖かった。
あの人から逃れられないのかと思うと絶望さえだいてしまう。
「大丈夫ですか?」
駆け寄ってくれた男の人は、手を貸すか貸さないかで迷っているのか、オロオロと両手を出したり引っ込めたりしている
「あの、手……貸しましょうか?」
聞いてくれた男の人は、ボサボサの髪に着古したパーカーとジーンズを穿いた冴えない雰囲気の人だったけれど、全身から人の良さが滲み出ている。
「あ、ありがとう……ございます」
立ち上がろうとしたけれど、膝が震えて立てそうになく、私の横で戸惑いながら見てきている男の人にお願いをした。
「すみませんが、立たせてもらえますか?」
「は、はいいい!」
何故か彼はやけに大きな声で返事をしてくれた。
私の差し出した手を握ってくれた彼の手は、意外と大きく、指も細い上に長くて綺麗だった。
(あ、手が綺麗で目が行くってわかる……)
諸岡さんが言っていたことを思い出しながら、彼の手を借りる。
立たせてくれた彼に改めてお礼を告げた。
「助けてくださってありがとうございます。あの、お名前を……」
「お、俺ですか!?」
なぜか緊張しまくった声で彼は頭を掻きながら、視線をさまよわせる。

