心臓がキリキリ痛む。
たとえ裕哉が誰かのものになってしまっても、軽蔑されたくなんかない。
私の神様から、見放されるなんてそんな恐ろしいことはない。
黙り込んだ私の肩を、ぐっと抱き寄せた男は口端を引き上げた。
「ほら、早く部屋に行けよ。久しぶりにおまえを可愛がってやるから」
「や……やめて……放して」
男は腕をつかみ、無理やりマンションのエントランスに入ろうとする。足を踏ん張り抵抗をしたが、男の力に敵うわけがなかった。
「ここにも会社にも居たいのなら大人しく従えよ、な、みお」
「イヤだ……放してよ!」
裕ちゃん! 助けて、と心で叫ぶ。
その時、唐突に声が割って入った。
「ちょっと、その人、嫌がっていますよ」
若い男の声だった。
「なんだ、おまえ。関係ないだろうが」
「でも嫌がってる。とりあえず警察呼びましょうか?」
割って入ってくれた男の人がスマホを取り出し、どこかへ連絡をし始めたのを見て、男は舌打ちをしながら、私の肩を突き放した。
「邪魔が入ったから今日は帰ってやる。みお、また来るからな」
言い捨てるや、身を翻して去っていった。

