では、同居でお願いします

考えたくもないけれど、一つの結論が見えている。
ただ見たくなくて目を逸らしている。


――私はただの家政婦。


その一言を、見ないようにしているだけだ。

一緒に住んでいるから特別なんて、それはまやかし。

単なる同居人。同居の家政婦。
決して同棲ではない。あくまでも同居だ。


――だからどこに行くかなんて何も言わないんじゃないの?


頭の中で意地悪な誰かがささやく。

(そんなこと、わざわざ言わないでよ)

反論しても、心の中におもりが増えていく。
酸素不足のように息苦しい。


今日もいそいそと早めに仕事を切り上げようとしている裕哉の横顔は、隠そうとしているが、やけに嬉しそうだ。
何かに期待している目をしている。

諸岡さんを呼び止め、何か話を始める。話を聞く諸岡さんもどこか嬉しそうに見える。

疎外感が胸を占める。

(頼りなくても、私だって秘書なのに……)

益体もなく呟きたくなってしまう。