では、同居でお願いします




同居を始めて二カ月が過ぎた。

秋の色が深まり、夜は寒いとさえ感じるようになっている。
仕事も近頃は諸岡さんとの連携もスムーズになり、日々順調だった。

そんな中、裕哉のことで一つ気になることがある。

近頃、週末になると裕哉は、「海音ちゃん、今日は遅くなるから先に休んでいて。夕食も済ませてくるから」と会社を早めに出ることが時々ある。

私を遠ざけ、諸岡さんと何か打ち合わせをしてから、夕方早めに退社していくのだ。



「社長、もしかしてデートかな?」

「婚約者がいるらしいって聞いたことある」

「早く帰る日は、すっごくいそいそとしているよね」

「やあだ。密かに社長狙っていたのに! お相手はきっと令嬢だよね~」



女子社員の間でそんな噂が立っている。

私生活での裕哉は相変わらずだらしない。
生活の全てを任せっきりで、けれどいつも優しく労ってくれて、頭だってポンポンしてくれている。

だから「彼女ができた」なんて考えられない。


それなのにジワリと黒く重たい雲が胸の中に広がるのはなぜ?