では、同居でお願いします

「今まで社長が散々振られるところを見て来ました。あれほどの顔立ちに頭脳、それに将棋の腕を持ちながら、なぜか女性には必ず振られてきました」

(ああ……多分、ギャップが……。悪い方へのギャップがね……。将棋もウケが悪いみたいだしね)

明白な理由はあるが、私は黙って話の続きを待つ。

「ですので、井波さんのことはまだ諦めませんよ。遠からず社長が振られるかもしれませんからね。次の恋人候補ということで、手を挙げさせていただいておきます」

言うなりスッと諸岡さんは右手を挙げた。

「社長と同じ人を好きになったことはありません。まあ、社長にアプローチする女性は大体が外見に自信のある派手な女性が多かったので、私はそういう方を好きになることはありませんでしたから。ですので、今回が初めてではありますが、私は負けませんよ」

「…………そうですか」

この時、私はひそかにダメージを受けていた。

(そっか。やっぱり裕ちゃんの過去の彼女さんたちは、派手で綺麗な女性ばっかりだったんだ。私なんかじゃ見劣りするよね……)

今後、式やパーティで彼の隣に並ぶことを考えれば、「なんて平凡な女だ」と思われてしまうだろう未来がはっきりと見える。

それは佐和乃さんにも言われたことだ。

(裕ちゃんのことを思えば、私なんかじゃ彼の格を落としかねないよね……)

考えれば考えるほど落ち込む一方だった。