裕哉が苦悩するように眉根を寄せる。


とてもセクシーだ。

スッと通った鼻筋も、涼やかな目元も、整った唇も、どれも今は官能的にさえ見える。

その唇が艶やかに開かれた。

「キス……してもいい? 我慢できない」

「キ、キス!!!」

そ、それか! と思うと同時にどこかで安堵と落胆がない交ぜになっている。

もしかして、と心の奥底でもう一人の自分が言う。


(もしかして……裕ちゃんと、もっと深く関わることを望んでいるんじゃないの?)


男の人を信用することも、深い関係を結ぶことも、もうイヤだと怖がっている自分は、裕哉の前では存在しないんじゃないのと、耳の奥で声がする。


(でもね……今はまだ……少しだけ待っていて……)


裕哉の甘い瞳に迫られて、私はそっと目を閉じた。


二人の唇の距離がゼロになる。


優しく触れた唇は、裕哉の気持ちが表れている。


――ゆっくり歩こう。


そう言ってくれた言葉に嘘がないことを、その唇が告げている。

(裕ちゃん……)

優しいあなたが大好きです。
好きになってくれてありがとう……。


胸が満たされて、私は泣きたいほど幸せを感じていた。