では、同居でお願いします

「うん……でも」

「でも?」


「まずは、同居でお願いします」


『同棲』ではなく『同居』でと、そんな些細な抵抗に、裕哉は満面の笑みで頷いた。


「はい! では、同居でお願いします!」


すぐに腕を伸ばして私をギュッと抱きしめた。

「やったあ! ようやく海音ちゃんが僕の手の届くところに戻って来てくれる!」

同居と同棲の違い、わかっているのかな……なんて、少し呆れながらも、私もなぜか嬉しくて、裕哉の背中へ手を回す。


神様は、遠くから恋い焦がれるものだと思っていたのに、こんなに近くで抱きしめ合えるなんて、私はきっと贅沢だ。


幸せ過ぎると怖いから、だから同居でお願いします。


心の中でそっと呟けば、胸が小さく震える。

裕哉とならば、過去に怯えて足を踏み出せないでいる私も、すぐに消えていくような気がしている。

優しくて強引で子どもで大人で、そんな裕哉と一緒に歩いて行けると思えば胸の中がじわりと暖まる。


「海音ちゃん……」


裕哉がそっと体を起こし、私たちは見つめ合う。

甘い瞳が私を見ている。

ここがホテルのロビーということも忘れてしまいそうになる。