では、同居でお願いします

「彼女? うん、いたよ。でも長続きしたことない」

「どうして?」

「仁にもいつも言われていたんだけど、将棋にのめり込み過ぎるんだ。それで彼女をほったらかしにしてしまって、いつも愛想を尽かされる」

「将棋」

そうだった。

やけに裕哉は将棋に詳しいようだし、なんとか杯がどうだのと紀ノ川さんと話していた。

「諸岡さんも将棋をしているって言ってたし、裕ちゃんもするの?」

「え? 仁が言ったの?」

「う、うん。聞いたよ」

えええ、と裕哉は非難めいた声を上げた。

「もしかして将棋をしていることを隠してたの?」

おずおずと聞いてみる。もし隠していたいのなら、無理に聞き出すのは気が引ける。

少しだけ躊躇したように口を閉ざし、それから裕哉は話し始めた。

「実はさ、仁も僕も高校時代も大学もずっと将棋部に所属していて、結構アマでは何度も優勝しているんだ。あ、仁は一つ下の後輩なんだけどね、侮れないほど強いよ。今でもずっと続けていて、年に一度、夕凪杯はプロと指せるチャンスだから参加しているんだ」

「へええ、そうなんだ」

初めて聞く裕哉の話に、私は興味を引かれる。

そういえば、先読みの仁だとか、粘りの柳井とか、ダサい二つ名を言い合っていたが、それが将棋部のことだったのだ。