では、同居でお願いします

「だ、大丈夫? 海音ちゃん!?」

慌てて背中をさすってくれる裕哉だったが、私はそれどころではない。

「な、ななな何を言い出す、ゲホ、ゴホ」

咳き込みながら、パニックになってしまっている脳内で考える。

(結婚って聞こえたけど、結構の間違い?)

いや、と考え直す。

子どもっぽい裕哉のことだ。
もしかして一緒に住む=結婚くらいの中高生レベルの想像ということもあり得そうだ。

うん、それが一番あり得る、と自分で納得して体勢を立て直した。

「あ、あのね、裕ちゃん。結婚って言った?」

「うん、言った」

(うん、言ったじゃないよ!!)

この軽さ。絶対によくわかってない。

「いい? 一緒に住むことと結婚は別物なの。一緒に住むから結婚しなきゃとか、そんな必要はないんだよ? 結婚は好きな人とするものだよ?」

大人が子どもに言い聞かせるように噛んで含めて教えると、裕哉はコックリと頷く。

「うん、わかってる」

「……絶対にわかってない。だって裕ちゃん、私のことを好きとだとか言ったこともないし、そんな態度したことないじゃない。いきなり不自然だよ」

「えっと……海音ちゃんはさ、僕が海音ちゃんを好きだって気持ちに全く気がついてなかったの?」

逆に裕哉から思わぬことを問い返され、私は首を傾げる。

(気がつく?)

今の今まで気がつくどころか、そんな素振りは欠片もない。

いや、まず好きの種類が怪しい。