では、同居でお願いします

ドクンと心臓が跳ねる。

血の気が引いて、一瞬で泣き止んでしまった。

「落ち着きなさい。井波海音」

「……はい」

思わず掠れた小声で返事をする。反射に近い反応だ。

「僕が言ったことの意味を、君は取り違えている」

ビジネスライクな話し方をする裕哉の張り詰めた空気に緊張が高まる。

仕事で大きなミスをしたような、そんな緊張感に私は裕哉の腕の中で硬直する。

「落ち着いて聞いて欲しい。僕が言った意味は、世話をして欲しいということじゃない。あなたに……海音ちゃんに側にいて欲しいだけなんだ」

一つ息を継いで裕哉は静かに続けた。

「もし許されるのなら、いずれ結婚をしたいと……そういう意味であって……その、家政婦とか……あの、いや、そんなことは……」

途中からしどろもどろになってしまった裕哉の顔を、今度は私が凝視する。

「……?」

言葉の意味が読み取れないので、順を追って整理を試みる。


(世話を欲していない。側にいて欲しい。いずれ結婚したい。家政婦とか……)


「ええええ! け、け、け結婚んんん!?」


その言葉の破壊力に驚きすぎて、私はゲホゲホとむせかえってしまった。