では、同居でお願いします

「私は裕ちゃんのことが好き。だからお世話をすることはイヤじゃないよ。でも、一生だなんて……裕ちゃんが誰かと結婚しても私は家政婦として二人を見つめるしかないなんて……そんなの地獄だよ! バカ!! 裕ちゃんのバカバカ!!」

何度も何度も「バカ! バカ!」と泣きながら叫ぶ。

これでは私の方が幼い子どもだ。

小学生でももっと気の利いた文句の言い方をするだろう。

二十二歳を過ぎたって、所詮こんなものなのかと思えば、裕哉の子供っぽさを笑うことなどできない。

冷凍バナナのように凍り付いてこちらを見上げていた裕哉が、ハッと我に返り立ち上がる。

そして泣き喚く私を強引に抱き寄せ、腕の中に包み込む。

けれど私は抵抗して裕哉の胸を拳でドンドンと叩き、バカを連呼した。

「海音ちゃん、落ち着いて」

「お、落ち着け、ない! こん、こんな、酷い気持ち、落ち、着けるわけ、ない!」

ヒックヒックとしゃくり上げながら話すから、言葉が切れ切れになってしまう。

そんな私を裕哉は力を込めて抱きしめた。

「やめっ!」


「井波海音」


凜とした声ではっきりとフルネームを呼ばれ、私は手を止める。

その声は会社で聞く時の社長、柳井裕哉だ。

従兄弟の裕ちゃんではなく、社長として私を呼んだ。