では、同居でお願いします

裕哉が一つ大きく息を吸ったから、抱きすくめられている私の体も同じように上下する。

こうして抱き寄せてくれている裕哉の優しさからきっぱりと離れるためにも、仕事は変えるべきだ。

そう告げようと呼吸を整えたが、裕哉が先に口を開いた。

「海音ちゃんが役立たずなんて、そんなのあり得ないよ。仕事は真面目で一所懸命で、すごく気遣いができて……社内でも評判がいいんだ。特に秘書課の人は海音ちゃんの一所懸命さに感服するって言ってた」

(そうなの?)

自分の評価などあまり耳にする機会などない。

裕哉に恥をかかせたくなくて、今まで必死に走ってきた。

見本となるべき諸岡さんという優れた背中が私を導いてくれているから、なんとかミスもなくやってきているだけだ。

それを評価してくれている人がいるのなら、嬉しいことだ。


真っ暗に塗り込められていた心の中に小さな灯がともる。

誰かに認められることは、とても温かな気持ちになる。


「それを……僕は無神経な言葉で傷つけて……本当にごめん。でも、僕が言いたかった真意は、仕事を辞めろってことじゃないんだ」

(それはわかってる。家事をして欲しいってことだよね)

裕哉が続けるであろう意図を先回りして考えておく。心が傷つかないように。