では、同居でお願いします

想いはちゃんと吐き出さなければ、いつまでも心の中に住み続けると、紀ノ川さんから相談された時に思った。

今、紀ノ川さんがこのチャンスを逃してしまえば、きっと彼の心は彼女から解放されない。

しかも、どうやら両想いのようではないか。


(私とは全く状況が違ってしまったね)


いつかこの気持ちを伝えられたらいいな、なんて思っていたけれど、私の場合は、かなり遠い先になりそうだ。

だから紀ノ川さんのことが羨ましい。

それなのにまだ悩み続けるから、私はお節介だと自覚しながら紀ノ川さんの後押しをする。

「もうダメだと思っていたのに、彼女がフリーだったんですよ? ここで行かないでどうするんですか! 今が一世一代の踏ん張りどころです!」

「一世一代の踏ん張りどころ……」

ぼそりと呟いた紀ノ川さんがガバリと顔を上げ、私を見つめた。

「一世一代……ここが勝負なんでしょうか?」

「そうですよ、大一番です」

「大一番……それならば、僕は……」

熱に浮かされたように言葉をこぼす紀ノ川さんが、やおら目を見開いた。