「僕、柳井と申します。先日の夕凪杯(ゆうなぎはい)にも出ていました」
いつの間に用意したのか裕哉は素早く名刺を差し出す。
「は、はあ」
完全に紀ノ川さんは怯えている。
名刺へと伸ばす手がビクビクしていて、見ていて申し訳なってきた。
「裕ちゃん、ちょっと離れてあげてよ」
グッと裕哉の袖を引っ張った次の瞬間、今度は紀ノ川さんが叫んだ。
「あああああああ! あなたは!!」
ビクッと盛大に肩を震わせたのは、私だった。
「なっ……!?」
申し訳ないけれど、食物連鎖のヒエラルキーで言えば、一番底辺にいるか弱い草食動物のような紀ノ川さんの(本当に失礼だ)、思わぬほど大きな声に、ビックリしてしまった。
叫んだくせに紀ノ川さんは続く言葉もなくただ黙って裕哉を見続ける。
「あ、あの……紀ノ川さん?」
(気になるから、叫んだ後に黙り込むのはやめていただけませんか?)
言いたいけれど、紀ノ川さんの驚きようが尋常ではないので、私も口を出せなくなる。
「私を、ご存知ですか?」
訝しげに尋ねる裕哉は凜として、こちらはヒエラルキーの上位にいるような貫禄もある。
が、一転して裕哉は額に手をあてた。
いつの間に用意したのか裕哉は素早く名刺を差し出す。
「は、はあ」
完全に紀ノ川さんは怯えている。
名刺へと伸ばす手がビクビクしていて、見ていて申し訳なってきた。
「裕ちゃん、ちょっと離れてあげてよ」
グッと裕哉の袖を引っ張った次の瞬間、今度は紀ノ川さんが叫んだ。
「あああああああ! あなたは!!」
ビクッと盛大に肩を震わせたのは、私だった。
「なっ……!?」
申し訳ないけれど、食物連鎖のヒエラルキーで言えば、一番底辺にいるか弱い草食動物のような紀ノ川さんの(本当に失礼だ)、思わぬほど大きな声に、ビックリしてしまった。
叫んだくせに紀ノ川さんは続く言葉もなくただ黙って裕哉を見続ける。
「あ、あの……紀ノ川さん?」
(気になるから、叫んだ後に黙り込むのはやめていただけませんか?)
言いたいけれど、紀ノ川さんの驚きようが尋常ではないので、私も口を出せなくなる。
「私を、ご存知ですか?」
訝しげに尋ねる裕哉は凜として、こちらはヒエラルキーの上位にいるような貫禄もある。
が、一転して裕哉は額に手をあてた。

