では、同居でお願いします

私は裕哉の腕を引いて、紀ノ川さんとの間に入り込む。

「ちょっと裕ちゃん、紀ノ川さんが驚いてるでしょ? いくら憧れていたって失礼だよ!」

この人は、就業時間が過ぎると子どもになってしまうのだから、これはどうにかならないのか。

きっとあの佐和乃さんというお嬢様はこんな非常識でダメダメな裕哉を知らないだろう。

「あああ、僕としたことが、すみません! 驚かせてしまいました」

深々と頭を下げる裕哉を見つめる紀ノ川さんは完全に涙目だった。

というか、今気がついたが裕哉はそんなに将棋フリークだったのだろうか。初耳だ。

「アノ、イナミサン、コノカタハ?」

完全にカタコトの怪しい外国人になってしまっている紀ノ川さんが助けを求めてくる。

私も裕哉と一緒になって頭を下げ、紀ノ川さんに裕哉を紹介する。

「ごめんなさい。私の従兄弟なんです。悪い人ではないですから安心してください」

そう告げると、ようやく紀ノ川さんは肩から力を抜いた。

「そ、そうでしたか。いや、驚きました、はい」

「ですね、本当にすみません」

ガバッと裕哉が顔を上げると、それだけで紀ノ川さんがビクッとした。

完全にトラウマになっている感じだ。