では、同居でお願いします

どうやら紀ノ川さんは将棋で有名な人らしい。

天才棋士で若手ホープ(この言い方が古くさい)。

名人に近い。


……なんとなく理解しました。


「……へええ、凄い人なんだ、多分」

将棋に全く知識のない私にとっては、あまりその凄さがわからなかったが、裕哉はやけに興奮している。

「だって、僕憧れてるんだ。慎重でいながら深くまで攻め入る将棋は、華麗で強い! また指が綺麗! 将棋を指すために生まれてきたと言っても過言ではないほど綺麗な指をしている」

「多分、過言」

そんなための指などないだろう。

しかし私の突っ込みなど全く耳に入らない裕哉は、呆然と立ち尽くす紀ノ川さんの両手を無理やりつかんで握手を強要している。

「わああ、お会いできて感激です!」

「イ、イナミサン」

困惑の瞳でこちらに助けを求める紀ノ川さんの言葉が、完全に日本語の発音ではなくなっていた。