では、同居でお願いします

「裕ちゃん! 待ってよ」

裕哉を止めるために止めていた足を出した私に、紀ノ川さんが縋るような目を向ける。

彼の心の声が聞こえた気がした。


――タスケテ……


弱々しい彼の声がテレパシーのように脳内に届いた気がする。

駆け寄った私は裕哉の腕を掴んだ。

「裕ちゃん、紀ノ川さんを怖がらせないでよ。どうしたの? いきなり叫んで」

グルンと顔をこちらに向けた裕哉が、瞬きをくり返した後、興奮気味に言った。

「だって! 紀ノ川七段だよ!」

(ごめん、わからない……)

だって、と言われてもその興奮の意味がわからない。

しかしすぐに「ん?」と首を傾げた。

「ななだんって何?」

「何、じゃないよ! 彼は将棋界の若手ホープ、天才棋士との呼び名の高い紀ノ川亮介七段だよ? 今、一番名人に近いと言われる彼を知らないとか、有り得ない!」

(ごめん、わからない……)

説明してくれたけれど、いま一つ理解できない。

興奮する裕哉を横目に情報を整理する。