では、同居でお願いします

声に気がついたのか紀ノ川さんが立ち止まりこちらを振り返り、首を傾げた。

「井波さん?」

紀ノ川さんの声を聞いて裕哉が立ち止まる。

エントランス前で立ち止まる紀ノ川さんに、裕哉の視線が移る。

わずか三秒。

三秒後に裕哉は叫んでいた。


「ええええ!!!」


会社ではスマートな社長。自宅ではのほほん系の頼りないぼんやりさん。

その裕哉の叫びだ。

私はめちゃくちゃ驚いた。

「ゆ、裕ちゃん!? どうしたの?」

「きの、きの……」

驚きながら私と紀ノ川さんを往復するように顔を動かし、何度かくり返した後、紀ノ川さんで止まる。

「紀ノ川って……紀ノ川七段!?」

「はあ?」

「七段!!」

裕哉は叫んだ後、ダッと駆け出し、エントランスで呆然としている紀ノ川さんの前で立ち止まる。


「あああああの、ぼぼぼ僕に、なななな何か?」


(紀ノ川さんを怖がらせているから!)


気の弱い(と思われる)紀ノ川さんは、突然叫びを上げ駆け寄ってきた怪しい男に腰が抜けんばかりに驚いている。