では、同居でお願いします

「そんなの的外れなのに。そんなことされて僕が安心するとでも思ったの?」

「でも……諸岡さんが社長は私が心配で彼女と付き合えないからと……」

はああ、とまた裕哉は大きく吐息を吐き出し、ハンドルに覆い被さる。

「仁……気を回しすぎ。しかも斜め上」

呟いてから裕哉は顔を起こすと俯く私を見つめた。

「誤解のないように言っておくけど、僕は彼女――佐和乃さんと付き合う気はないんだ」

驚いて裕哉を見つめると、彼は苦笑を浮かべて首を振る。

「最初は彼女の父親から付き合うように紹介されたんだ。でも彼女にはずっと想い続けている人がいたんだ。その人のことを吹っ切りたくて、会場で見かけた僕に白羽の矢が立っただけで」

「会場?」

展示会か何かで知り合ったのだろうか。

裕哉が彼女と一緒にタクシーを乗っているところを見たあの頃、特に展示会などはなかったと思うけれど、色々と顔も広く忙しい裕哉のことだから、スケジュールになくても顔をだしたりすることもあったのだろう。

「その時、僕はちょうど彼女のお父さんに特別な計らいをしてもらったところで、交換条件のように彼女との付き合いをお願いされたんだ。僕も最初は何とか彼女と付き合わなくてはと思ったんだけど……お互いに気持ちがないままでは付き合えなかったんだ」

初めて聞く裕哉の事情に私はただ聞き入る。