では、同居でお願いします

一刻も早くここから脱出したい私の想いとは裏腹に、諸岡さんは語りに入る。

「ところが礼儀は正しいし頑張りやで一所懸命、すぐにあなたに惹かれました」

いやいや、そんな素振り全くなかったですよ?

「それなのにあなたは社長を見ている……私は諦めようと思いましたが、そこにあの内海さんが現れました。彼女は社長に相応しいお嬢さんです。ぜひこれは逃してはならないと思いました」

その言葉に私の胸は一気に痛みだす。


――社長に相応しいお嬢さん


この一言が心の奥底まで鋭く届く刃のように突き刺さった。

(そうだよね、裕ちゃんに相応しいのは私ではないのは明白だもんね)

それでもこの恋心が消えてしまうまで諦めたくない。

成就を願っているわけじゃない。想っているだけでいいから、それくらいはどうか許して欲しい。


「そのことは同時に私にとってはチャンスでした。社長はあなたが心配でお付き合いに踏み込めない。それならば私が井波さんとお付き合いすれば、社長も安心できますし、私も晴れてあなたとお付き合いできます。あなたには……少々戸惑いがあるかとは思いましたが、ゆっくりと私のことを見てくれるようになればいいと、そうあって欲しいと願っています」

私は言葉を失い諸岡さんを見つめる。

彼の瞳の中に嘘や誤魔化しは含まれていないと思った。