では、同居でお願いします

「仁、すぐにお通しして。それと同席してくれ」

「了解しました」

キビキビと動く諸岡さんと何となく二人きりになるのが心地悪く、私はそそくさと先に社長室を出た。

「井波さん」

それなのにすぐに呼び止められてしまう。

「は、はいっ」

ビクッと肩を跳ね上げた私に、諸岡さんは素早く歩み寄ると耳元で囁く。

「今日、帰りに食事に行きましょう」

それだけ告げて足早に私を抜いて行ってしまった。

(って、待って! 今日は裕ちゃんが送って行ってくれるから無理ですよ!)

私の返事など聞かずにお客さんを迎えに出た諸岡さんの背中に、心のなかで叫んだ。


その日は訪れたT社の役員と一緒に、裕哉と諸岡さんは一日外出となってしまい、食事の誘いのお断りを伝える機会がないままになってしまった。

「帰ってきたら一番に言わなきゃ」

今を遅しとソワソワと諸岡さんの帰りを待っていると、夕方五時過ぎになって裕哉と二人並んで戻ってきた。