では、同居でお願いします

「二度と私の前に顔を出さないで。あなたなんかと二度と会いたくない」

言い切った途端、藤川の形相がサッと変わった。

その時まで、私はすっかり失念していた。


藤川が酒臭い息を吐いていたことを。


「誰に向かって口をきいているんだ!」

激高し、唸り声をあげながら藤川が拳を振りあげ、私目がけて殴りかかった。

「井波さん!」

素早く紀ノ川さんが私を庇って腕を持ち上げ、藤川の拳を腕で受け止める。

その動きの素早さに、私は彼との会話を思い出す。


――もっと強くなったら……段位が上がれば……。


こんな外見だけれど、きっと腕に自信があるだろう。何か武道などをたしなんでいるのだろう。

藤川の拳を正面から受け止める紀ノ川さんには、迷いはなさそうだった。


「うわあぁぁぁ!!」


紀ノ川さんは吹っ飛ばされてアスファルトの歩道に転がった。

そのまましばらく「痛い……」と何度も呟きながら身動きを止める。


彼はびっくりするほど弱かった。