どれくらいそうしていただろう。
ゴト、という音で我に返って顔を上げた。
白いラベルの缶コーヒーだ。

「どうぞ」

相変わらず笑顔の山上係長。

「あ、りがとうございます…」

びっくりした。いつの間に買いに行ってたんだろう。
彼の手元には黒い缶。あれはブラックコーヒーだ。
私に買ってきてくれた缶を見ると〝ミルクたっぷり〟の文字。気を遣ってくれたらしい。