「ところで、佐川課長以外に変な虫は飛んでない?」
私の支度を待っていてくれているようで、慌ててパソコンをシャットダウンする。
「変な虫って…」
とても上司に対する表現では無いけれど、山上係長が言うと何でも爽やかに決まる。
「そもそもいませんよ!そんな虫なんて」
「曽根川さんは見た目通り鈍いもんなあ。やっぱり俺が守らないと」
うんうん、と納得するように頷いて、山上係長ははっきり宣言した。見た目通りって、さらっと失礼ですね!
「曽根川さんは、今から俺の彼女ね」
「はっ、えっ?!」
だから何でそうなるの!
何やら満足そうに鼻歌を歌いながら歩いていく。
私は会社の鍵を持っていないので、必然的に一緒に退社することになりまして。
もう何が何だかパニック寸前。寸前と言うかもはやパニック。
私、付き合うの?
山上係長と?