「芽依子サン!!ヒール!!今日のアナタ、ヒールですから!!」



「はい。センパイに逢えると思って、めいっぱいお洒落してきました」



「それはとーっても嬉しい……いやいやいや、今日は俺、サンダルだから。かかとの凶器、ザックリ刺さってますから!!」



「そんなの分かってます。だって刺してますから」



「ヒドい!芽依サンのオ…ギャァァァァー!!」



やはり俺は選択肢を誤ったらしい。



相談…そう。俺はこの2人に相談をしに来たはず。



なのに目の前で繰り広げられるこれは…一体なんと言うべきか。



イチャイチャ?いや、ある意味イチャイチャ?いやいや、見たまんまなのは間違いないのだが、会長…いや、年上である彼の威厳は何処へやら…相変わらず年下の彼女の尻にしかれまくり。



生徒会名物と化しているそれは見ていて飽きないが、今日のソレはあまりにお気の毒。



スニーカーならまだしもサンダル…ほぼ生足にヒールは流石に痛い。見ているこっちまで冷や汗モノだ。



「芽依子ちゃん…」



「はい?」



「そろそろ海くん解放したげて?足、使いものになんなくなる前に」



「あー…」



「これから体育祭とか文化祭とかあるし…ね?えーと、アレだ。解放したげなきゃイベントが…」



「あー…そうですね。あたし以外の人がセンパイ苛めるのも癪に触りますし…じゃあ、そろそろ。それに、このままじゃ話進まないですしね」



「あー…」



分かってんならさっさと話を進めてくれ、なんて思ったが、ここでそれを口にしてしまったら後が怖い。ってか、八つ当たりされるであろう海くんの命…いや、精神が危うい。



「あぁ、ありがと」



「いえいえ」



俺は力尽きたと言わんばかりにパタリとテーブルに伏せる海くんを横目に、何事も無かったかのようにドリンクバーのホット緑茶を啜る芽依子ちゃんを見つめながら、引きつりそうな笑顔を堪え、ニッコリと、これでもかってほどの笑みを浮かべた。