「あ、おかえり~。」
教室へ戻ると、友達の佐久良 心菜(サクラ ココナ)がお菓子を食べながらそう言ってくれた。
ただいまと言いながら、心菜の前の席に座る。
「また告白?」
「うん…まぁね。」
「どうせ顔だったんでしょ?
そんなやつ振ってせいかーい。」
心菜は私の親友で、小学生の時からずっと一緒。
気軽になんでも言い合える仲。
「食べる?」
心菜は、持っていたお菓子を私にくれる。
それを受け取って、口にいれながら私はため息をついた。
「落ち込んでるの?」
「さすがにね…
私は顔じゃなくて、性格を見てほしいの。」
何て言っても、誰も聞いちゃいない。
「贅沢な悩みだこと。」
「本当にね…」
私はまた深くため息をつく。
いつか、私を性格で好きになってくれる人はいるのかな…
多分…まだいない。
「あ、そういえば!」
「ん?」
突然何かを思い出したのか、心菜は大きな声を出した。
「あの人、えっと…4組の、そ…そ…そね…」
「曽根田淳(ソネタ ゙ジュン)?」
「そう、その人!
曽根田くんは優衣のことちゃんと好きなんじゃない?」
心菜の言う曽根田淳とは、2年4組の男子のこと。
1年生のときから何故か私の言うことを聞く。
そして、毎回告白される。
「あー、淳はないなー。
もうペット?って感じだし。」
「え、曽根田くん可哀想…」
「あいつに情けは必要ない。」
そう言って笑うと、心菜は次の瞬間衝撃的な言葉を発した。
「でも、曽根田くんモテるんだよ?」
思わず飲んでいたお茶を吹き出してしまいそうになるくらい驚いた。
「ど…どゆ…こと?」
ゴホゴホ咳をしながら、心菜に聞き返す。
「どういうって…モテるものはモテるよ。」
「じゃなくて、あの淳がモテるって、皆目が腐ってるんじゃないの?!」
「優衣の中で曽根田くんってどういう人なの…」
「淳は、変人で、ペットで、馬鹿で…」
言い出したらキリがないくらい、淳にはモテる要素が1つもない。
世の中どうかしてる!
「じゃあ今日、本人に聞けば?
どうせ一緒に帰るんでしょ?」
「私は嫌だけどね。」
「そうですかー。」
自分から話題をふっておいて、さほど興味なさげに返答する心菜。
「あ、そういえばさ…」
そして次の話題へとうつった。
その間も、淳がモテるということが 頭から離れなかった。

