やはり、考えは浮かばなかった。



『そなに慌てるでない。ゆっくりと聞き入れていけば良い』



神は私に宥めるように語りかけた。



「そんなことわかってる……」



神に当てた小さな独り言は、窓から入った春の暖かな風と共に流れていった。



太陽が暮れ、月がまた昇る。



灯りを付けていないこの部屋に、暗闇と静寂が訪れる。



座っているソファーは、形を保ったまま深くに沈む。



ハーと、深いため息をついてソファーから立ち上がる。



そして、フィンが眠るこの部屋の扉をバタリと閉めて、長い長い廊下に足を踏み入れた。